たまに読書録も書いていこうと思う。ということで最近読んだ1冊を。
「服のはなし 着たり、縫ったり、考えたり」
著者の行司さんは新聞記者さん。
昭和40年代生まれの同世代ということもあり
親近感を持ちながらあっという間に読了した。
副題にある“縫ったり”のとおり、彼女は服を作る。
20代の頃は流行に乗って大量の服を買っていたが、
仕事に行き詰まりを感じでいた30代前半に髪をショートにして
フルメイクをやめたことから“ふと”服を作ってみようと思ったそうだ。
独学ではじまったという服作りはお母様の服も。
写真が載っているのだが、小柄でとっても可愛らしいお母様が
行司さんの作ったワンピースやジャンパースカートを着ていらっしゃる姿は
とってもステキ。
街でこんなおばあちゃまを見かけたら
私ならきっと声をかけてしまうにちがいない。
実際にお母様は「あら、その服とってもお似合い」と
すれ違う人に声をかけられるそうだ。
同世代なので、10~20代の頃のDCブランドブームに始まって
海外の高級ブランドブーム、今のファストファッションまで、
数十年の服の変化を、行司さんと同じ目線で俯瞰して感じることができた。
年齢はもちろんのこと、職業が変われば服も変わるし
生活環境が変われば服も変わる。
流行のスパンが早く、そのシーズンにはみんなが同じような服を着て
大量に処分されていく今の時代の服。
アパレル業界は大変だろうなとつくづく思う。
2000年代初頭に「クウネル」や「天然生活」といった
いわゆる“暮らし系”と呼ばれる雑誌が相次いで創刊された背景の説明もあった。
私もクウネルは2002年の創刊号から数年間愛読していた。
その頃は“ていねいに暮らす”なんて無縁の生活だったから、
ステキな表紙を眺めながらうっとりし、癒やされていた思い出がある。
その頃のささやかな願望が
「好きな人のために(←ここ大事)一日3食ちゃんとごはんを作って生活したい」
だった。
その願いは20年後に叶っているぞよと、当時の自分に言ってあげたい!
話は逸れたけれど、その「クウネル」に行司さんの服作りが取り上げられたことがきっかけで個展を開催したり、
まわりの人などから私にも作ってとリクエストが来るようになったのだという。
そんなご友人や知人に作った服をエッセイと写真付きで紹介している
「おうちのふくー世界で1着の服ー」も読んでみたが、こちらもおすすめ。
ところで私がこどもの頃、母はよく2階の部屋で服や巾着袋を縫っていた。
石油ストーブの匂いのするその部屋で私は、母の足踏みミシンの音を聞きながら
色とりどりのミシン糸が入った箱を開けては色を並べ替えて遊んでいた記憶がある。
下糸を入れるボビンケースのひんやりした感触を今でもはっきりと覚えていることに
この本を読みながら気づいてちょっとびっくりした。
母がミシンを踏んでいたのはおそらく長い期間ではなかったと思うけれど。
この本は、埋もれていたそんな記憶も思い出させてくれた一冊だった。